秋祭りについて

秋10月になると、大久保町住吉神社は太鼓の音を響かせながら練り出された西と東の2台の布団太鼓でにぎわいます。
西講中の布団太鼓は、胴体が太く頑丈な練り太鼓で、布団台の下には阿吽の龍が立体的に刺繍された豪華な水引幕が施され、さらに金糸で刺繍された大蜘蛛の高欄掛けで飾られています。
秋祭りは10月の第3日曜日に昼宮、その前日の宵宮の2日間にわたり開催され、布団太鼓の宮入りが行われます。
秋祭りでの布団太鼓の宮入は、西講中が布団太鼓を製作した江戸時代後期から行われており、明治中頃に東講中が布団太鼓を製作した後は、西・東の二台の太鼓の宮入が行われるようになりました。宮入順序については、昔は西が先に宮入りしていましたが、平成26年以降は宮入順を西と東が毎年交代するようになりました。
太鼓は、前側は30歳ぐらいまでの若衆が、後ろは30歳以上の中老が担ぎ、神社の境内を練り歩きます。また、中に据えられた太鼓は小学3年生から中学1年生の「乗り子」が叩きます。
若衆の祭り衣装については、以前は前にリリアンのさがりをつけてまわしを締め、背中に若の字が入った法被を着、道中では虎や龍の図柄が入った長じゅばんを羽織っていましたが、 近年若衆の人数が減ったこともあり、令和4年よりまわしは止め、若衆・中老とも全員が背中に西の字が入った法被で担いでいます。

大久保町住吉神社の祭り衣装の紹介

「まわし」を着用していた頃の様子

祭りの流れ

荒神祓い(こうじんばらい)

宵宮は朝から荒神祓いが行われます。荒神祓いとは、竈(かまど)や火の神様である三宝荒神をお祀りし、火災を防ぐための祈りを捧げる儀式です。 生活様式の変遷により竃が無くなった現在では、講中の家々を回り玄関先でお祓いを行い、神の守りである獅子により御幣で悪い気や汚れを祓い、神鈴で清める形で進められています。

かど入れ

倉出しの前、太鼓の乗り子たちが、担ぎ手を太鼓の倉出しに集まってもらうようふれまわります。4人が赤い法被と西の頭巾をかぶって肩を組み、 太鼓が通る旧西国街道を歩きながら、「かーどいれーに きておくんなーれ」と掛け声をかけ、担ぎ手たちを呼び集めていきます。この光景は、秋祭りの始まりを告げる風物詩ともなっています。

大久保町住吉神社のかど入れの写真

かど入れの様子

倉出し~宮入り

「よいよいよい」と掛け声をかけながら、布団太鼓を倉から引き出し、「ですけでほい」の掛け声で布団太鼓の向きを進行方向に変えます。 「ひーふーのみっつでこい」の掛け声で太鼓を担ぎ上げ、台車(地元ではソロバンと呼んでいる)に乗せます。

大久保町西講中の太鼓の倉出し

倉出しの様子

倉を出た太鼓は、「こんこん ちきちきち こんこん」の掛け声でソロバンの引き綱を引き旧西国街道を通り、若衆達が伊勢音頭を唄いながら神社へと向かいます。
現在は住吉神社まで太鼓をソロバンに載せて曳いて行きますが、昭和40年代中頃までは若衆・中老が神社まで太鼓を担いで宮入りをしていました。

大久保町西講中の太鼓の宮入

道中の様子

宮入り

宮入り後、若衆・中老達によって担がれた布団太鼓は、伊勢音頭を唄いながら神社の拝殿前へと向かいます。 そして「さーしましょう」の掛け声とともに拝殿前で何度も頭上高く差し上げられます。これは神前への敬礼や感謝を表すために行われるものです。 その後、太鼓を担ぎながら「よーいとさー」の掛け声とともに境内を練り歩きます。

頭上高く差し上げられた大久保町西講中の太鼓

頭上高く差し上げられた太鼓

さらに、「やしたー やしたー」の掛け声を掛けながら境内の地面の上を太鼓をグルグルと練りまわす、「練り」も行われます。 これは、地面を耕して豊作を祈り、地の神を鎮める意味合いがあると言われており、西講中の秋祭りの最大の特徴です。 また西講中の布団太鼓が「練り太鼓」と呼ばれる所以となっています。

大久保町西講中の練り

練りの様子

宮出し~JR大久保駅

太鼓の宮出し後は神輿を先頭に、むかし御旅所があったJR大久保駅前まで太鼓の巡行を行います。

大久保町住吉神社の西国街道巡行

西国街道巡行の様子

大久保駅前

JR大久保駅前

倉入れ

巡行を終えた太鼓を倉へとしまい、「打ちましょう しゃーんしゃん 祝うてしゃんの おっしゃかしゃんの しゃーん しゃん、
もひとつこい 念のため 祝うてしゃんの おっしゃかしゃんの しゃーん しゃん」の掛け声で祭りを締めくくります

大久保町西講中の倉入れの写真

倉入れの様子

布団太鼓巡行ルート

伊勢音頭

伊勢音頭は、江戸時代の伊勢国で唄われ、お伊勢参りを通じて全国に広まった民謡で、現在では各地の祭りで唄われています。
西講中の秋祭りでは、若衆たちが伊勢音頭を唄いながら 町内を巡行し、太鼓を担ぎ練り歩きます。
ここでは、実際に西講中の秋祭りで唄われている伊勢音頭の一部を紹介していきます。

伊勢音頭①(宮入り時に唄うもの)

アーヨー オイサーエー
めでた めでたーの ヨイヨイ
若松様よ アーヨーイセー トーコセ
枝もなー 栄えてー ヨーイソレサエ 葉も繁る
ソレ ホンマカイナヤートコセー ヨーイヤナ
ソレ アレは伊勢 ソレ コレは伊勢
ソリャーヨーイトコ伊勢

伊勢音頭②(差し上げ時に唄うもの)

アーヨー オイサーエー
さした盃は ヨイヨイ 中見て飲まれ アーヨーイセー トーコセ
中はナー 鶴亀 ヨーイソレサエ 五葉の松
に続く

伊勢音頭③(町内巡行時に唄うもの)

アーヨー オイサーエー
上から鶴さん キリリキリリと舞い下がり
下から亀さん のそりのそりと舞いあがる
天と地との間にて 鶴となー 亀とーが ヨーイソレサエ
舞いをー 舞うー
に続く

伊勢音頭④(町内巡行時に唄うもの)

アーヨー オイサーエー
娘17・8は嫁盛り たんす 長持ち はさみ箱
これだけ持たせてやるからにゃ 二度と帰ると思うなよ
そいつは父ちゃんちょいと無理よ
千石積んだる船でさえ 西が曇れば雨とやら 東が曇れば風とやら
思案 思案の しどころで
雨となー 風とーが ヨーイソレサエ
出戻―りさせる
に続く